大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第一小法廷 昭和26年(れ)703号 判決

本籍

東京都墨田区吾嬬町西六丁目四五番地

住居

同都台東区西町六三番地

石鹸製造業

宮澤要一

昭和六年八月一〇日生

右に対する強盗傷人強盗、住居侵入被告事件について昭和二五年一二月二八日東京高等裁判所の言渡した判決に対し原審弁護人遠山丙市から上告の申立があつたので当裁判所は刑訴施行法二条に従い次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人松尾菊太郎の上告趣意について。

しかし、強盗傷人罪が成立するには、強盗の機会に傷害の結果を発生せしめるを以て足りるものであつて、必ずしも強盗の手段である暴行又は脅迫により人を傷害し、又は傷害の意思を必要とするものではない。されば、共犯者の一人が強盗の機会に与えた傷害の結果に対し他の共犯者がその責を免れないことは多言を要しないし、また、原判決は所論原審証人池田輝久の供述中宮本みつ江に対する傷害の点に関する部分をば明らかに証拠として採用しなかつたところであり、そして、原判決の強盗傷人の判示事実は挙示の証拠でこれを肯認するに余りがあつて採証の法則に違背する点は毫も存しない。また、証拠の取捨判断は原審の裁量に属するところであるから、この点に関する所論は、上告適法の理由とならない。それ故、論旨はすべて採用できない。

よつて旧刑訴四四六条に従い、裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

検察官 濱田龍信関与

(裁判長裁判官 齋藤悠輔 裁判官 澤田竹治郎 裁判官 眞野毅 裁判官 岩松三郎)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例